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フィンランドの森の音色、カンテレの基本的な弾き方をあなたに

まるで北欧の森に響く妖精の歌声。フィンランドの伝統楽器「カンテレ」の澄んだ音色に魅せられたあなたへ、初心者でも始められる基本的な弾き方と、その奥深い魅力をご紹介します。

美しい木彫りが施された伝統的なカンテレのクローズアップ
この美しい木目と、弦が織りなす繊細な佇まい。カンテレはただの楽器ではなく、フィンランドの魂が宿る芸術品です。Source: Markus Winkler / unsplash

北欧フィンランドの静寂な森、そして神秘的な湖。そんな美しい風景の中から、まるで自然そのものが歌っているかのように聞こえてくる音色があります。それが、フィンランドの伝統楽器「カンテレ」の響きです。私が初めてその音を耳にした時、心がすーっと浄化されていくような、不思議で温かい感覚に包まれたのを今でも鮮明に覚えています。

「伝統楽器って、なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんね。正直に言うと、私も最初はそう思っていました。でも、カンテレは驚くほど懐が深く、初めて楽器に触れる人にも優しく寄り添ってくれるんです。この記事では、カンテレの基本的な知識から、具体的な弾き方の初歩まで、私の経験を交えながら、できるだけ分かりやすくお伝えしていきたいと思います。あなたもこの美しい音色を、自分の手で奏でてみませんか?

そもそもカンテレってどんな楽器?

カンテレは、フィンランドの国民的叙事詩『カレワラ』にも登場する、非常に長い歴史を持つ楽器です。物語の中では、英雄ワイナミョイネンが巨大な魚の顎の骨で最初のカンテレを作ったと語られており、その音色は森の動物たちや自然さえも魅了したと言われています。この神話からも、カンテレがフィンランドの人々にとって、単なる楽器以上の、魂の象徴のような存在であることが伝わってきます。

構造的には、日本の琴や沖縄の三線などと同じく、弦を弾いて音を出す「撥弦楽器」の一種です。弦の数は、最もシンプルな5弦のものから、30弦を超える複雑なコンサートカンテレまで様々。特に5弦や10弦の小型カンテレは、その素朴で美しい音色と手軽さから、フィンランドでは子供たちの音楽教育にも取り入れられているほど、広く親しまれています。

私が思うカンテレの最大の魅力は、その透明感あふれる響きです。ポロンと弦を一本弾くだけで、その残響が空間に美しく広がり、まるで水面に落ちた一滴の雫が波紋を描いていくかのよう。その音は、私たちの心の奥深くに静かに届き、日々の喧騒で忘れていた穏やかな時間を取り戻させてくれる力があるように感じます。

さあ、音を奏でてみよう!基本的な構え方とチューニング

カンテレを手に入れたら、いよいよ音を出す準備です。まずは楽器の構え方から。5弦や10弦などの小型カンテレは、膝の上に乗せるか、テーブルの上に置いて演奏するのが一般的です。この時、一番大切なのはリラックスすること。肩の力を抜いて、自然な姿勢で楽器と向き合ってみてください。

楽器を置く向きですが、多くの場合は一番短い弦(最も高い音が出る弦)が自分側に来るように置きます。こうすることで、メロディを弾く際に指が動かしやすくなるんです。でも、これは絶対的なルールではありません。立って弾きたい場合はストラップを使ったり、自分が一番「しっくりくる」と感じる角度や構え方を見つけるのが一番です。

次に、音を合わせる「チューニング」です。これが少し難しく感じるかもしれませんが、今はスマートフォンのアプリで簡単に使えるチューナーがたくさんあるので、ぜひ活用してみてください。5弦カンテレの場合、最も一般的なチューニングは「Dメジャーペンタトニック」と呼ばれるもので、弦を低い方から順に「D-E-F#-G-A」と合わせます。この音階は、どの弦をどんな順番で弾いても不協和音になりにくく、不思議と美しいメロディに聞こえる魔法のようなチューニングなんです。まずはこの音階で、自由に弦を弾いて音の世界を楽しんでみてください。

指先から生まれる魔法:基本的な弾き方

カンテレの基本的な弾き方は、とてもシンプルです。主に使うのは「単音弾き」と「和音(コード)弾き」の2種類。最初は、人差し指や親指の腹で、弦を一本ずつ優しくポロン、ポロンと弾いてみましょう。ピアノの白鍵だけを弾いているような感覚で、直感的にメロディを紡ぐことができます。

少し慣れてきたら、ぜひ「和音弾き」にも挑戦してみてください。カンテレの面白いところは、弾きたくない音の弦を、もう片方の手の指で軽く触れて「ミュート(消音)」しながら、残りの弦をジャラーンとかき鳴らす奏法があることです。例えば、5弦カンテレで一番低いDの弦と一番高いAの弦だけを鳴らしたい時。中間のE, F#, Gの3本の弦を左手の指で軽く押さえ、右手の指で全ての弦をかき鳴らします。すると、ミュートされた弦は音が鳴らず、DとAの美しいハーモニーだけが響き渡るのです。

このミュート奏法を覚えると、表現の幅がぐっと広がります。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、いくつかの基本的なコードの押さえ方を覚えるだけで、簡単な曲ならすぐに伴奏がつけられるようになります。大切なのは、完璧を目指すことよりも、指先から音が生まれる喜びを感じること。焦らず、自分のペースで、音との対話を楽しんでみてください。

カンテレと暮らすということ

カンテレが家に来てから、私の日常は少しだけ豊かになった気がします。仕事で疲れた夜、眠りにつく前の静かな時間、ふとカンテレを手に取り、気の向くままに弦を爪弾く。その澄んだ音色を聞いていると、張り詰めていた心がゆっくりと解きほぐされていくのが分かります。それは、まるで自分自身のための小さな瞑想の時間です。

カンテレは、決して大きな音が出る楽器ではありません。だからこそ、都会の集合住宅でも、時間を気にせず楽しむことができます。その控えめで優しい音色は、自己主張するのではなく、私たちの生活空間にそっと溶け込み、潤いを与えてくれます。

もしあなたが、日々の生活に少し疲れていたり、何か新しいことで心をリフレッシュしたいと思っていたりするなら、カンテレは最高の友人になってくれるかもしれません。このフィンランドの森からやってきた小さな楽器が、あなたの日常に、穏やかで美しい時間をもたらしてくれることを、心から願っています。

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