Cooking Tips

ぬるま湯で淹れるのが正解?玉露の本当の美味しさを引き出す、温度と時間の秘密

最高級の日本茶、玉露。そのとろりとした甘みと豊かな旨みを最大限に引き出すには、実はちょっとしたコツがあるんです。今回は、私がたどり着いた「最高の一杯」を淹れるための、温度と時間の秘密についてお話しします。

静かな空間に置かれた、美しい白磁の急須と湯呑みのセット
この静けさの中で、お茶と向き合う時間。それだけで、心がすっと整っていくような気がしませんか。Source: Ivan S / pexels

お茶の時間って、不思議と心が落ち着きますよね。慌ただしい日常の中で、意識的に「何もしない」時間をつくる。私にとって、それがお茶を淹れるひとときなんです。特に、玉露を淹れる日は、朝から少しだけ心がそわそわします。というのも、私、昔は大きな失敗をしていたから。あんなに高価で美味しいはずの玉露を、他の緑茶と同じように熱湯で淹れて「あれ?なんだか苦いな…」なんて思っていたんです。今思えば、本当にもったいないことをしていました。

玉露の本当の魅力は、まるで出汁を思わせるような、とろりとした濃厚な「旨み」と、口の中に広がる豊かな甘み。この個性を知ってからは、玉露を淹れるプロセスそのものが、一種の儀式のように神聖なものに感じられるようになりました。そして、その最大の鍵は、お湯の「温度」と「時間」にあると気づいたんです。今日は、そんな私の失敗談も交えながら、玉露が持つポテンシャルを最大限に引き出すための、ちょっとしたコツをお話ししたいと思います。

玉露はなぜ「ぬるま湯」で淹れるのが美味しいの?

「玉露はぬるま湯で淹れると良い」と、一度は聞いたことがあるかもしれません。でも、その理由を考えたことはありますか?私も最初は半信半疑でした。熱いお茶が好きなのに、どうしてわざわざぬるくするんだろうって。でも、これにはちゃんとした科学的な理由があるんです。玉露の美味しさの秘密は、その栽培方法に隠されています。茶摘みの前の約20日間、茶園に覆いをかけて日光を遮ることで、茶葉の中の成分が劇的に変化します。

日光を制限すると、渋み成分である「カテキン」が増えるのを抑えつつ、旨みと甘みの素であるアミノ酸の一種「テアニン」が豊富に蓄えられるんです。このテアニンこそが、玉露のあの独特な味わいの正体。そして、成分によってお湯に溶け出す温度が違う、という点が非常に重要になります。

テアニンは50℃くらいの低い温度でも十分に溶け出すのに対し、カテキンは80℃以上の高温にならないとあまり溶け出しません。つまり、熱湯で淹れてしまうと、せっかくの旨み成分と一緒に、渋み成分まで一気に抽出してしまうことになるんです。だからこそ、50℃〜60℃という、触ると少しぬるいかな?と感じるくらいの温度でじっくり淹れることで、渋みを抑え、テアニンの持つ旨みと甘みを最大限に引き出すことができる、というわけなんですね。この理屈を知ったとき、私のお茶に対する考え方が180度変わりました。

基本の淹れ方:一煎目の黄金ルール

では、実際にどうやって淹れるのか。ここでは私がいつも実践している、一煎目を最高に美味しくするための基本的なステップをご紹介します。最初は少し手間に感じるかもしれませんが、慣れてしまえば簡単。そして何より、その価値は一口飲めばわかるはずです。

まず、道具を温めます。急須と湯呑みに一度熱湯を注ぎ、全体が温まったらそのお湯は捨ててください。これは、お湯の温度が急に下がるのを防ぐための大切な準備です。次に、少し多めかな?と感じるくらいの玉露の茶葉(一人分で約5〜8gが目安)を急須に入れます。

ここからが温度調整の本番。沸騰したお湯を、一度別の器(湯冷ましがあればベストですが、なければ空いている湯呑みでもOK)に移します。器を移すたびに、お湯の温度は約10℃下がると言われています。これを2〜3回繰り返すと、ちょうど50℃〜60℃の理想的な温度になるんです。そのお湯を、茶葉が入った急須にそっと注ぎ入れます。そして、ここからが我慢の時間。蓋をして、約2分間、じっくりと蒸らします。この待つ時間が、玉露の旨みを引き出すためのクライマックス。急須の注ぎ口から漂う、青海苔のような、甘く豊かな香りを楽しみながら待つのもまた一興です。

二煎目、三煎目も余すことなく楽しむ

玉露の素晴らしさは、一煎だけで終わらないところにあります。むしろ、二煎目、三煎目と変化していく味わいを楽しむことこそ、玉露の真骨頂かもしれません。一煎目で凝縮された旨みを味わった後の茶葉には、まだたくさんの美味しさが残っています。

二煎目を淹れるときは、一煎目よりも少しだけ温度を上げたお湯(60℃〜70℃くらい)を使います。そして、抽出時間はぐっと短く、20〜30秒ほどで十分。さっと淹れることで、一煎目とはまた違った、少し爽やかさのある味わいが出てきます。旨みの中に、心地よい渋みが顔を覗かせ、味の輪郭がはっきりしてくるのを感じられるはずです。

木のテーブルの上に置かれた、白い急須と湯呑み
一煎目、二煎目と、淹れるたびに変わるお茶の表情。その繊細な変化に気づけたとき、なんだか嬉しくなります。Source: Chris Lawton / unsplash

三煎目はさらに温度を上げ、80℃くらいのお湯で淹れてみましょう。ここでは、玉露が持つ爽やかな香りと、最後に残った渋みを楽しみます。そして、淹れ終わった後の茶葉。実はこれも食べられるんです。ポン酢や少しのお醤油をかけていただくと、まるで高級なおひたしのよう。栄養も丸ごと摂れるので、ぜひ試してみてください。

玉露を丁寧に淹れる時間は、自分自身と向き合うための、静かで豊かな時間です。温度計がなくても、器を移すひと手間をかけるだけで、驚くほど味は変わります。忙しい毎日だからこそ、ほんの数分、立ち止まってみる。そんな小さな贅沢が、日々の暮らしをより味わい深いものにしてくれるのかもしれませんね。

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