「いつか」では遅いかも。将来の持ち家が空き家にならないための、今からできること
自分の、そして親の家。大切な思い出が詰まった場所を、未来の「お荷物」にしないために。空き家問題が深刻化する今、私たちが知っておくべきこと、そして今日から始められる対策を、一緒に考えてみませんか?

最近、ニュースや新聞で「空き家問題」という言葉を目にしない日はありません。総務省の調査によると、日本の空き家は過去最多を更新し続けているそうで、その数はもはや他人事ではないレベルに達しています。正直なところ、少し前までは「地方の過疎地の話でしょ?」なんて、どこか遠い世界の出来事のように感じていました。でも、自分の親が年を重ね、実家が少しずつ静かになっていくのを感じるたび、この問題がすぐそこにある現実なのだと、ひしひしと感じるようになりました。
あの家には、自分が生まれ育った部屋がまだあって、壁の落書きや、身長を刻んだ柱の傷が今も残っている。夏休みには家族みんなでスイカを食べた縁側、冬にはこたつで暖まったリビング。そんな温かい思い出が詰まった場所が、いつか誰も住まない「空き家」になってしまうかもしれない。考えただけで、胸がぎゅっと締め付けられます。
これは、単に家という「モノ」の話ではありません。家族の歴史そのものを、どう未来に繋いでいくかという、とてもデリケートで、でもすごく大切な話なのだと思います。だからこそ、問題が起きてから慌てるのではなく、元気な今のうちから、家族みんなで考えておく必要があるのではないでしょうか。
なぜ今、真剣に考えるべきなのか?空き家がもたらすリスク
「まだ親も元気だし、考えるのは早すぎるよ」と思うかもしれません。でも、専門家の話を聞くと、事前の準備が本当に重要だと痛感させられます。空き家を放置することのリスクは、私たちが思っている以上に大きいのです。
まず、経済的な負担。誰も住んでいなくても、固定資産税は毎年かかります。さらに、2023年に改正された「空家等対策特別措置法」によって、管理が不十分な「管理不全空家」に指定されると、税金の優遇措置が受けられなくなり、固定資産税が最大で6倍にも跳ね上がってしまう可能性があるんです。これは本当に大きな負担ですよね。庭の手入れや定期的な換気など、遠方に住んでいるとなかなか難しい維持管理にも、手間と費用がかかり続けます。
そして、物理的なリスクも無視できません。老朽化した家屋は、台風や地震で倒壊したり、屋根や壁が剥がれ落ちて近隣に被害を与えたりする恐れがあります。また、人の出入りがなくなると、庭は荒れ放題になり、害虫が発生したり、不審者が侵入したり、放火のターゲットになったりと、地域の治安悪化の原因にもなりかねません。大切だったはずの実家が、ご近所から「迷惑な存在」だと思われてしまうなんて、これほど悲しいことはありません。
問題になる前にできる、具体的な3つのステップ
では、具体的に何から始めればいいのでしょうか?難しく考える必要はありません。大切なのは、一歩を踏み出すことです。私が専門家から学んだ、今からできる3つのステップをご紹介します。
ステップ1:何よりもまず「家族会議」
これが一番重要で、そして一番難しいステップかもしれません。お金や相続の話は、どうしても感情的になりがち。だからこそ、親が元気で、判断力がしっかりしているうちに、兄弟姉妹も交えてオープンに話し合う場を設けることが不可欠です。
「この家、将来どうしたい?」「誰か住みたい人はいる?」「もし誰も住まないなら、どうするのが一番いいと思う?」
そんな風に、まずは全員の気持ちを確認することから始めましょう。親の希望を尊重しつつ、それぞれのライフプランや現実的な負担を正直に話し合う。このとき、誰か一人に責任を押し付けるのではなく、「みんなの問題」として捉える姿勢が大切です。すぐに結論が出なくても大丈夫。定期的に顔を合わせて話し合うことで、少しずつ全員が納得できる方向性が見えてくるはずです。
ステップ2:家の「価値」と「選択肢」を知る
家族の意向がある程度まとまったら、次は専門家の力を借りて、客観的な情報を集めましょう。地元の不動産会社に相談して、実家が「売れそうか、貸せそうか」「もし売れるなら、いくらくらいになるのか」といった査定をしてもらうのがおすすめです。
もし家が古くて売却も賃貸も難しい場合は、「解体」という選択肢も出てきます。解体して更地にした方が、管理が楽になったり、土地として売却しやすくなったりするケースもあります。ただし、解体費用がかかる上、前述の通り税金が高くなる可能性もあるので、慎重な判断が必要です。最近では、自治体が解体費用の一部を補助してくれる制度もあるので、役所の窓口で相談してみるのも良いでしょう。
また、「空き家バンク」に登録して、移住希望者や地域で事業を始めたい人に活用してもらうという道もあります。自分たちだけで結論を出そうとせず、プロの視点や公的な制度を上手に活用することが、後悔しない選択に繋がります。
ステップ3:モノと思い出の「生前整理」
「実家じまい」で最もエネルギーを使うのが、家財の片付けです。何十年もの暮らしで溜まったモノの量は、想像を絶するものがあります。親が元気なうちに、一緒に少しずつ整理を始める「生前整理」は、将来の負担を減らすだけでなく、親子のコミュニケーションを深める絶好の機会にもなります。

古いアルバムを一緒にめくりながら、「この時、こんなことがあったね」と笑い合ったり、昔の洋服を手に取って、「これはお母さんが初めてのデートで着ていった服よ」なんて話を聞いたり。そうやって思い出を共有しながら、「これは残す」「これはありがとうを言って手放す」と仕分けしていく。
もちろん、全てを捨てる必要はありません。本当に大切なもの、次の世代に伝えたいものだけを厳選する。この作業を通じて、親が何を大切にして生きてきたのかを改めて知ることができます。それは、子どもにとって、何物にも代えがたい貴重な時間になるはずです。
未来への贈り物として
将来の持ち家について考えることは、決してネガティブなことではありません。むしろ、家族がこれまで築き上げてきた歴史と愛情を、次の世代へどう繋いでいくかを考える、とても前向きな作業です。
大切なのは、問題を先送りにしないこと。元気なうちに話し合い、準備を始めること。それは、親が子に残せる、最高の「贈り物」の一つなのかもしれません。
思い出の詰まった家が、誰かの負担になるのではなく、いつまでも家族の心の中で温かい場所であり続けるために。まずは今度の週末にでも、「うちの実家、将来どうしようか?」と、家族に話しかけてみることから始めてみませんか。その小さな一歩が、きっと家族の未来を明るく照らしてくれるはずです。
You might also like

【住宅ローン】変動か固定か?金利タイプの違いと後悔しない選び方を徹底解説
マイホーム購入で誰もが悩む住宅ローン。特に金利タイプは、将来の家計を左右する超重要ポイントです。変動金利、固定金利、それぞれのメリット・デメリットから、あなたにピッったりの選択肢まで、わかりやすく解説します。

もう現金いらない?キャッシュレスでお年玉を渡す新しい方法と本音のところ
毎年恒例のお年玉、今年はちょっと趣向を変えてみませんか?キャッシュレスでお年玉を渡す具体的な方法から、気になるメリット・デメリットまで、正直な気持ちで深掘りします。

七草粥の由来と正しい作り方、ご存知ですか?一年の無病息災を願う、日本の美しい伝統
1月7日、お正月の締めくくりにいただく七草粥。ご馳走で疲れた胃を休めるだけじゃない、その深い意味と歴史、そして誰でも美味しく作れるレシピをご紹介します。

「それ、無意識かも?」職場のアンコンシャスバイアス研修、本当に意味ある?内容と効果を徹底解説
最近よく聞く「アンコンシャスバイアス」。でも、研修って具体的に何をするの?本当に効果はあるの?そんな疑問に、最新の研究結果や具体例を交えながらお答えします。

馬と心を通わせる第一歩:乗馬の始め方と本当に必要な道具
「いつか馬に乗ってみたい」その夢、今年こそ叶えてみませんか?乗馬に憧れを抱きつつも、何から始めたらいいか分からないあなたへ。体験乗馬のリアルから、最初に揃えるべき道具まで、具体的にお話しします。