抹茶の味を最大限に引き出す水の種類と水温
自宅で点てる抹茶が、なぜかお店の味と違う…。その秘密は「水」と「温度」にあるかもしれません。最高の一杯を淹れるための、簡単で奥深いコツをご紹介します。

自宅で過ごす時間が増え、丁寧な暮らしを心がけたいと思う今日この頃。ふと、あの凛とした空気感の中でいただく、抹茶の味が恋しくなることはありませんか?カフェや茶室で飲む抹茶は格別ですが、いざ家で点ててみると「なんだか味が違う…」「苦味や渋みが気になる」なんて経験、一度はあるのではないでしょうか。
実はその違い、抹茶の品質だけでなく、淹れるときの「水」と「お湯の温度」に隠されていることが多いんです。私も以前は、ただ沸騰したお湯を注ぐだけでした。でも、ほんの少し水と温度にこだわるだけで、驚くほど抹茶の味がまろやかに、そして豊かになることを知ったんです。今日は、そんな抹茶のポテンシャルを最大限に引き出すための、水の選び方と最適な温度について、少しだけ深くお話ししたいと思います。
抹茶の風味は「軟水」で決まる
まず最初にこだわりたいのが、基本となる「水」です。日本茶全般、特に抹茶のように繊細な風味を持つお茶には、ミネラル分の少ない「軟水」が最適とされています。日本の水道水は、そのほとんどが軟水なので、実はとても恵まれた環境なんです。わざわざ特別な水を用意しなくても、ほんのひと手間で、抹茶に最適な水を作ることができます。
硬水に多く含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルは、抹茶の旨味成分であるテアニンや、鮮やかな緑色のもとであるクロロフィルの抽出を妨げてしまいます。その結果、味がぼやけたり、色がくすんでしまったりする原因になるのです。もし市販のミネラルウォーターを使う場合は、パッケージに記載されている「硬度」を確認し、できるだけ低いもの(硬度60mg/L以下が目安)を選ぶと良いでしょう。
水道水を使う際に一番気をつけたいのが、消毒のために含まれる「カルキ(塩素)」です。このカルキ臭が、抹茶本来の繊細な香りを邪魔してしまうことがあります。対策はとても簡単。やかんでお湯を沸かす際に、沸騰してから蓋を開けて3〜5分ほど弱火で沸かし続ける「煮沸」を行うだけ。これでカルキ臭はほとんど抜けて、まろやかな口当たりの水になります。浄水器を通した水を使うのも、もちろん素晴らしい方法です。
苦味と旨味の分岐点、お湯の「温度」
そして、水の種類と同じくらい、いえ、それ以上に抹茶の味を左右するのが「お湯の温度」です。高価な抹茶でも、熱すぎるお湯で淹れてしまうと、苦味や渋みが際立ってしまい、その魅力は半減してしまいます。逆に、温度が低すぎると、抹茶の豊かな香りが十分に引き出されません。
抹茶を点てるのに最適な温度は、一般的に**70℃〜80℃**と言われています。この温度帯が、抹茶の甘みと旨味の成分である「テアニン」が最もよく抽出され、苦味成分の「カテキン」の抽出は抑えられる、まさに黄金のバランスなのです。80℃を超えるとカテキンが多く溶け出し、キリッとした苦味が強くなります。これはこれで一つの味わいですが、抹茶本来のまろやかな旨味を楽しみたい場合は、少し低めの温度を意識するのがおすすめです。

では、どうやって70℃〜80℃のお湯を用意するのか。一番簡単なのは、沸騰したお湯(100℃)を一度別の湯冷ましやマグカップに移す方法です。器を移すたびに、お湯の温度は約10℃下がると言われています。つまり、沸騰したお湯を一度別の器に移せば約90℃、もう一度別の器に移せば約80℃になります。このひと手間が、あなたの抹茶を劇的に変えてくれるはずです。
また、抹茶を点てる前に、茶碗に少量のお湯を入れて温めておくことも大切なポイントです。冷たい茶碗にお湯を注ぐと、それだけで温度が5℃〜10℃も下がってしまいます。あらかじめ茶碗を温めておくことで、点てる間もお湯の温度が安定し、きめ細かくクリーミーな泡が立ちやすくなります。茶筅をお湯に浸して柔らかくするのと同時に行える、理にかなった作法なのです。
いつもの一杯を、特別な一杯に
水の種類と、お湯の温度。たった二つのことを意識するだけで、いつもの抹茶が、まるで専門店でいただくような、深く、まろやかな味わいに変わることに、きっと驚かれることでしょう。
茶筅を振るうリズミカルな音、立ち上る青々しい香り、そして口に含んだ瞬間に広がる、ほろ苦さと優しい甘みのハーモニー。忙しい日常の中で、ほんの数分、抹茶と向き合う時間を持つことは、心を整え、穏やかな気持ちにさせてくれる、最高のセルフケアかもしれません。
難しく考えすぎず、まずは今日の午後、お湯を一度だけ別のカップに移してから、抹茶を点ててみませんか。その小さな変化がもたらす、豊かな味わいの発見を、心ゆくまで楽しんでいただけたら嬉しいです。
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